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Project #02 ささしま高架下オフィス

“不可能”を“可能に”。高架下に生まれた木造2階建ての大空間

mission

木材の可能性を飛躍的に高める「LIVELY WOODⓇ(ライブリーウッド)」。それは、建材としてどのように活用され、どんな空間と居心地を生み出すのか。その実例が、名古屋の高架下にある。成長著しいスタートアップのオフィス空間に、LIVELY WOODⓇがもたらしたものとは――。

Background

JR名古屋駅「ささしま高架下オフィス」プロジェクト始動

帝人が開発した“木だけど、木じゃない”全く新しい建材、LIVELY WOODⓇ。スギの木と炭素繊維を組み合わせ、旧来のスギ集成材とほぼ同じ重さでありながら、剛性(たわまなさ)は2倍以上という、今までにない剛性を実現したプロダクトだ。いま、さまざまなシチュエーションでLIVELY WOODⓇを実装するプロジェクトが始まっている。

その第一弾として、2022年3月、愛知県名古屋市のJR名古屋駅の新幹線高架下に、LIVELY WOODⓇを活用した「ささしま高架下オフィス」が誕生した。これまで、2019年に自社の東京研究センター(日野市)内にオープンした「MIRAI LIVELY HOUSE」で使用されて以来、社外の建築物に採用されるのは初めてのこと。LIVELY WOODⓇの民間施設採用第1号物件、さらに、事例の少ない高架下木造建築として、建築、設計、木材業界など各所から注目を集めている。

近年、高架下は多様な使い方がなされており人気施設も誕生している。だが、高架下は建築上の制約が多い。まず、高さや幅が制限されること。高架の柱や梁など既存の構造体(または工作物)に新たな負荷をかけられないこと。さらに、地中に高架の基礎やさまざまな設備が埋設されているため、重量に制限があることなど、である。

しかし、この構造的制約があったからこそ、LIVELY WOODⓇの持つ特長が大いに発揮され、類を見ない高架下木造2階建ての大空間が誕生することとなった。

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Chemistry

新技術がさまざまな課題を乗り越える

「ささしま高架下オフィス」の計画は、名古屋駅に隣接する笹島地区の再開発の一環として、東海道新幹線の高架下空間に新たなオフィスビルを建設するプロジェクトとしてスタートした。施主は、高架下を活用した店舗などの建設や開発を行う名古屋ステーション開発(株)。設計は一級建築士事務所MARU。Architectureが担当した。そして、本オフィスにテナントとして入居するのがITサービスを提供するスタートアップ企業の(株)スタメンである。

もともとスタメンの本社は近隣の高架下にあったが、社員の増加に伴い本社移転を考えていたという。移転にあたり同社が重視したのが「アフターコロナを見据えた新しい働き方の創出」だ。具体的には、人と組織の結びつきを強化し、社員が自然と集いたくなるような空間が求められた。そのため、仕切りの少ない開放的なオフィスづくりが目標となった。

従来の高架下建築の多くは、軽量鉄骨材を用いた平屋建てが主流であった。高さや重量に制限があるため、一般的な鉄骨造の2階建てビルを建てることは難しかったのだ。また、負担を減らすために木材を使用することも検討されたが、剛性を高くするためには梁の断面が大きくなり、2階建てが実現できたとしても天井が低くなる。

「どうやって高架下で開放的な空間を生み出すか?」
その難問のソリューションは、LIVELY WOODⓇだった。鉄骨よりも軽く、木材よりも強靭なLIVELY WOODⓇを使うことで、梁断面を抑えることができる。かくして、世にも珍しい、2階建て木造高架下建築が実現した。

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Solution

都市インフラと地元産木材の調和が生み出す心地良さ

完成した建物は、2階部分が歩道側に大きく跳ね出したダイナミックなファサードが特長的な、存在感のある佇まいになった。2階オフィスのテラスからは高架を走る電車を眺めることができ、一方、車窓からはオフィスで働く人々の姿が見える。無機質な高架の柱や梁と温かみのある木造架構が、物理的には独立しながらも調和し、不思議な一体感を生み出している。

今回の建築に使われたLIVELY WOODⓇの梁の使用本数は76本。屋根梁と2階の床梁に採用された。LIVELY WOODⓇの高い剛性と強度を活かし、天井付近に最大6mスパンの梁を設計することで、高架下の外側、遊歩道の上に大きく突き出た特長的なオーバーハング建築が実現した。これによって1階フロアよりも最大2.6m大きく張り出した2階フロアが生まれた。

空間内部を見てみよう。まず、配置する柱が最低限に抑えられることで、スタメン社が要望していた、間仕切り壁のない開放的な大空間が生まれた。従来の木造よりも梁断面が小さいため天井高も広々としている。そこに場所によって床の高さを変えるスキップフロアを設け、高低差によって空間が緩やかに区切られたオフィスに。大きく取られたガラス窓から心地よい自然光が差し込み、高架下でありながら、木の温もりや光を感じる心地良さがある。都市インフラとの新たな関係性を提案したこの建築は「2022年度グッドデザイン賞」「ウッドデザイン賞 2022 ライフデザインスタイルデザイン部門 奨励賞」「愛知まちなみ建築賞」などを受賞した。

なお、本建築のLIVELY WOODⓇには地元、愛知県産の三河杉が使用されている。地元産の木材を活用し、高架下の新しい可能性を広げたプロジェクトは地域活性化の面からも果たす役割は大きい。

「木を活かし、空間を変え、私たちの暮らしを活気づけること」。LIVELY WOODⓇに込められた想いは、着実に具現化されていっている。

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クレジット
編集/鈴木聡
執筆/裏谷文野
撮影/関 拓弥